今村夏子さんの本は2冊目です。1冊目は宗教が題材になっている「星の子」を読みましたが、2冊とも違った面白さがあって良かったです。
〇「むらさきのスカートの女」
タイトルと表紙のイラストが不気味。おかげで裏表紙の短ストーリーがより不穏な空気に変わります。
読んでいて最初は、人間観察ものなのかな。と思ったけれど、だんだん違う様相になっていきました。「語り手を信頼できない」ていう、後解説にあった表現がとてもしっくりきました。大きな展開があるわけではなく、じわじわ独特な語り手目線で周囲の人間関係がみえてきて、物語世界の輪郭をつかんでいく感じが不思議な読書感覚でした。このすっきりしなさが好きでした…◎
あとがきを読んでいて、ちょっと嬉しかったのが今村さんがとても普通な?というか親近感が湧くお人柄だということでした。19歳の頃に人と関わらない仕事に就こうと思い絵本作家を目指し秒であきらめたこととか、毎朝スマホで「会社 いきたくない」「会社 やめたい」と検索してから仕事に向かっていたとか。物語を書く苦しみとか、日常の描写とか、(意外にも)とても普通な感覚をもった人だ!と思えたので、この人が書く文章をもっと読んでみたいなぁと思いました。
〇「おいしいごはんが食べられますように」高瀬隼子
こちらはタイトルと表紙の可愛さとは裏腹に、中身は可愛くないストーリーでした。主に主人公の男性二谷と、同僚の女性押尾目線で人間関係が描かれてます。職場のやり取りに関する感覚とか、食に関する感覚が2人の視点からドストレートに書かれています。二谷が食べること自体を面倒に思っていることや、(俗に言うと)丁寧な生活をしている彼女を「あの人は、ちゃんとしてるから。」みたいな、肯定か否定なのか突き放した言い方をする感じが、the惰性人間で割と共感できる部分もあったのですが、、、他の読者からはボロクソに言われていて、これが世間なのか…と実感しました。
人間の嫌な感情も結構書かれていますが、私も人に同じような感情を持ったことはあるし、それ以上に持たれたりしているんだろうなぁ、と今までの自分のポジションとか人間関係を振り返って多少切なくなったりもしました。
物語の中で、同僚の押尾さんははっきりとした物言いと行動をする存在でしたが、なかでも、「それを言葉にしてくれてありがとう👏」と思えるフレーズがありました。
押尾さんは、二谷と食べるご飯が美味しいと思える理由を、食べ物の感想をいちいち言わないで済んで「おいしくても自分がおいしいって思うだけでいいっていうのが、すごくよかった。おいしいって人と共有し合うのが、自分はすごく苦手だったんだなって、思いました。」と二谷に話します。
人とご飯を食べているときに、美味しいを表現するために多少パフォーマンスしなければいけないことが面倒という感覚分かる。。食べ物に集中したいという感覚分かるよ。。目の前の人とか意識しちゃうと、満腹中枢が4割くらい上がるよね…
だから孤独のグルメ見てると安心するのか。